神経内科
筋萎縮性側索硬化症
どんな病気ですか? |
「amyotrophic lateral sclerosis」の意味は、「myo」は筋肉を表し、「atrophy」は「萎縮」を意味し、「amyotrophic」は脊髄前角細胞(または下位運動ニューロン)が障害されその支配を受けていた筋肉が萎縮する状態を表す。 |
どのような症状が特徴ですか? |
上位および下位運動ニューロンの障害に由来する症状が見られ、感覚神経や自律神経が侵されない特徴を持つ。 球症状と呼吸筋麻痺球症状である嚥下・構音障害と呼吸筋麻痺症状は、患者さんの生命予後と直結する臨床的に最も重要な症状です。 上位運動ニューロン徴候(錐体路徴候)大脳の運動野に細胞体があるBetz細胞は、その軸索が脊髄では側索を通り、このBetz細胞とその神経突起の軸索が上位ニューロンであり、この上位ニューロンが障害をうけると、脱力と痙性が見られる。 下位運動ニューロン徴候(前角細胞徴候)脊髄前角に大型の細胞体を持ち、その軸索が前根として脊髄がら出て、感覚神経と合わさって末梢神経を形成、最終的に神経筋接合部を形成して筋線維の興奮を支配する神経が下位運動ニューロンと呼ばれる。 ALSでは見られない徴候よく知られているALSでは見られない徴候は、「褥瘡ができない、排尿障害が見られない、眼球運動が侵されない」の3つである。「褥瘡ができないと排尿障害が見られない」は共にALSでは運動神経障害だけで自律神経系が侵されないことと関係する。 |
診断にはどのような検査がありますか? |
球症状、呼吸筋麻痺や運動ニューロン徴候を示す種々な病気との区別が重要です。これらの症状を来たしうる他の病気を除外してALSと診断がつけられます。そのためMRI、CT等の画像診断、筋電図検査、他の病気との鑑別に必要であれば髄液検査が通常の検査として外来や入院時に行われています。 |
治療法は? |
現在唯一保健診療で認められている薬物は抗グルタミン酸作用を有するリルゾール(リルテック)だけです。この薬剤はグルタミン酸が神経毒性を有し、リルゾールが神経系におけるグルタミン酸放出の抑制とグルタミン酸に対する神経保護作用の両方を持っていることから治療薬として使われています。 |
病気の進行やケアについて教えてください |
ケアと処置(栄養、呼吸)の方法の選択、特に呼吸器を使用するかどうかで生命予後は大きく変わります。呼吸器管理を行わない、通常の自然経過では球症状が出現して2~3年の命といわれていますが、看護や医療の内容で随分影響され明確な余命ははっきりしませんが、一般的には発症してから3~5年の寿命と言われています。 コミュニケーション構音障害が高度となると発語が聞き取れなくなります。また呼吸困難から気管切開処置が施されると発語ができなくなります。残存する上肢機能で筆記によるコミュニケーションが可能であれば良いが、多くは構音障害が高度になる病期には四肢の運動機能も高度に侵されていることが多いが、眼球運動が保たれているのが普通です。 嚥下困難嚥下障害には、食材の工夫でできるだけ経口食事摂取を行うが、経口摂取だけでは水分補給や栄養面で不十分であれば、経管栄養(胃チューブや胃瘻増設)あるいはIVH(中心静脈栄養)が行われる。特に、誤嚥性肺炎を契機に経管栄養やIVHに移行する場合が多い。 呼吸困難去痰困難だけであれば気管切開による吸引が有効であるが、同時に呼吸筋力低下による呼吸困難を伴っているため、切開口から酸素吸入の併用を行う場合が多い。 |
本人ご家族への病名告知はどうしますか? |
ALSの病名告知と人工呼吸器使用を含む病気の説明のガイドラインが国立療養所等神経内科協議会から提案されている。そのガイドラインによれば原則として患者本人に病名告知を行なうこと、すなわち家族に最初に病気の説明を行なうのではなく家族と同時に本人に説明あるいは本人の了解をとってから家族に説明することが提案されている。 |
参考になる図書や文献は? |
ALSマニュアルーALSと共に生きるー:アメリカALS協会編者(遠藤明訳者)。株式会社日本メディカルセンター。平成9年12月発行。 |
