神経内科
重症筋無力症
どんな病気ですか? |
脊髄前角に位置する運動ニューロンの神経終末とその支配筋線維とで形成される神経筋接合部の筋線維膜に存在するアセチルコリン受容体に対する自己抗体が罹患筋の脱力、特に易疲労性の原因となる自己免疫性神経疾患である。 |
どのような症状がみられますか? |
眼瞼下垂と複視(物が二重に見える)の眼症状で発症することが多く、病期を通してこの眼症状はほとんど必発の症状である。眼症状で発症した場合は、患者さんはまず眼科を訪れ、重症筋無力症の診断がつけられて神経内科に紹介されることがある。 |
診断のための検査は? |
診察では、特徴ある症状の問診とまばたきをできるだけこらえた上方視を行い、眼瞼下垂が出現するかどうかを見る。この方法で眼瞼下垂が出現すれば重症筋無力症と考えて間違いはないが、神経症や眼瞼痙攣による閉眼との区別がいるが、閉眼の場合は上眼瞼と共に下眼瞼が上方に動くことで区別される(重症筋無力症では上眼瞼のみが下がる)。 |
治療方法について教えてください |
治療法は最近刊行された「重症筋無力症治療ガイドライン」に詳細に記載されています。 抗コリンエステラーゼ剤抗コリンエステラーゼ剤(メスチノンやマイテラーゼ)は、対症療法として重症筋無力症患者に投与される。神経終末から放出されたアセチルコリンの分解を抑え減少した受容体に結合し易くさせることで易疲労の症状改善を計る。 早期拡大胸腺(腫)摘出術画像で胸腺腫が明らかでなくても手術で摘出した肥大胸腺に小さな胸腺腫が埋もれて発見されることも時に見られ、小児も含めて全身型では早期(発症1年以内に!)拡大胸腺(腫)摘出術が薦められている。 クリーゼの治療クリーゼを来たす重症全身型では、呼吸管理が大切で血液ガス検査結果(特にCO2分圧の上昇)で呼吸不全状態に陥っていれば、気管切開あるいは気管挿管を行って人工呼吸器管理とする。 免疫抑制剤ステロイド剤はMGの免疫治療において、一番良く使われまたその効果が評価されている薬物であるが、副作用の問題も大きい。ステロイド剤に対する禁忌の疾患を合併していなければ、中等~重症のMG症例や、軽症ではあるが複視や眼瞼下垂等の症状で日常生活や職場復帰に困難を感じている症例で投与される事が多い。免疫抑制剤のうちイムランは特に胸腺腫症例で効果があるとされ、妊娠予定のある若年女性や悪性腫瘍の既往のある患者を除き用いられている。一般的にはその効果発現には2-3ヶ月を要するので、副作用に注意しながら気長に使う必要がある。エンドキサンも使用されることにある免疫抑制剤の一つである。 血漿交換療法血漿交換療法は血清中の抗体を除去する事で、一時的な症状の軽快をもたらす療法であり、保険適応がありその効果発現は数日以内の早期に見られるが、多くは1~2ヶ月でもとのレベルに戻ってしまう。免役吸着法も血中の抗体を除去し、臨床症状の改善をもたらし、この免役吸着法はアルブミンの補充の必要がなく、血漿交換に比べて重篤な副作用も少ない利点がある。 免疫グロブリン大量療法免疫グロブリン大量療法は、血漿交換療法と同様に一時的であり、クリーゼ等の急性増悪期を乗り切ったり、他の療法では治療効果が期待できなかった場合に行われる療法と考えられているがわが国では保険適応はされていない。 |
病気は治りますか? |
以上の治療法を組み合わせることで70%の患者さんは軽快あるいは寛解(症状が改善して服薬を必要としない状態)が得られるが、30%の患者さんは社会生活に困難を感じる。 |
参考になる図書や文献は? |
難病の診断と治療指針 1 、厚生省保健医療局疾病対策課監修、難病医学研究財団企画委員会編集、六法出版社、1997年発行 小西哲郎、Evidence-based medicine (EBM)の重症筋無力症治療への応用。 |
