脊椎・脊髄外科センター
脳の病気
脳卒中
脳梗塞
医療の進歩は加速度的です。MRI検査では1mmの脳梗塞が分かります。しかも梗塞ができて3分で。
MRAで脳の血管を見ていると、加齢とは血管の動脈硬化であると実感します。赤ちゃんの時は滝のようにまっすぐ流れた血管も年をとると曲がりくねり、石狩川のようになってきます。アチコチでコレステロールがたまり流れの早いところ、遅いところがでてきます。血管の分岐部にコレステロールがたまり、血小板が固まって下流の血管を閉塞します。これが脳梗塞です。
心臓から飛ぶ時は脳塞栓、心原性脳梗塞といい、太い血管が白いフィブリンという物質でつまり、手足が麻痺したり言葉がしゃべれなくなったりします。長嶋監督は心原性脳梗塞でした。
頚の動脈の分岐部のコレステロールから飛んだ場合は、脳血栓、アテローム血栓性脳梗塞で、やや細い血管が詰まります。血小板が凝集して飛ぶ場合が多く、詰まってもまた流れることもあります。この状態が一過性脳虚血発作であり、症状が消えたと思って喜んではいられません。再発するからです。血栓の原因をよく調べる必要があります。
MRIで1.5cm以下の小さな梗塞がみつかり、症状が無いことがよくあります。ラクナ脳梗塞と診断されます。0.2mm以内の小血管が閉塞してMRIで発見されます。年をとって小血管が脂肪変性におちいり、閉塞したために起こります。血栓の予防薬であるアスピリンはラクナ脳梗塞を予防することはできません。血圧を下げ過ぎないことが大事であると考えられます。ラクナ脳梗塞が増えると認知症になる確率が高まります。
MRIには現れない脳梗塞もあります。それは血行力学的脳虚血と言って、脳梗塞にはなっていないけれども一時的に十分な血液量がいかずフラフラする(美山町の方言ではフイフイ)、自分が誰でここはどこか一瞬分からなくなるなどの症状が出ますが、MRIでははっきりしません。石狩川の源流のダムの水位が下がり、下流に水が流れにくくなった状態ととらえます。水分をしっかりとって、血圧を下げ過ぎないことが予防となります。
脳内出血
年をとって脂肪変性におちいった小血管が閉塞すると、二股の相手方の小血管にこれまでの倍の血液が流れ込みます。血圧に耐え切れず血管が破綻し、出血し、脳内出血となります。脳内出血も脳梗塞と同じようなメカニズムで起こります。血管の終着駅です。血管にアミロイドβ蛋白が沈着して血管が破綻、出血するアミロイドアンギオパチーも年老いた血管の末路と考えられます。
クモ膜下出血
脳の大きな血管は脳脊髄液の流れているクモ膜下腔の中にあります。生まれつき血管の中膜がない人が年をとって血圧が高くなると、血管の分岐部が膨らみ動脈瘤を形成するようになります。この動脈瘤が破裂するとクモ膜下出血を来します。5人に1人はその場でポックリ死亡し、病院に運ばれても1/3の人は死亡し、再出血に対する予防がなされないと、3週間は出血のリスクが高い怖い病気です。MRAで径2mm以上の動脈瘤を見つけることはできます。ただその動脈瘤が破裂するかどうかは不明です。
脳腫瘍
脳の硬膜から発生する髄膜腫、下垂体から発生する下垂体腺腫、神経の鞘から発生する神経鞘腫などは、良性腫瘍で外科的に摘出できれば、完治が望まれますが、アストロサイトから発生するグリオーマは、悪性で、手術、放射線、化学療法を行っても、完治は望めません。さらに、脳は頭蓋骨に囲まれた密室にありますから、いくら良性とはいっても、脳の深部にあれば、全摘出困難で、再発し、悪性と同じことになってしまいます。
髄膜腫は、女性に多く、閉経後に女性ホルモンが少なくなった、体型的には、小太りでポッチャリした人に多い印象があります。腫瘍が摘出できれば、完治が望め、直径が 3 cm 以下なら、ガンマナイフで治療するという選択肢もあります。
脳の発生のところでも触れましたが、脳は皮膚が内に捲れ込んで、内と外が、左と右が入れ替わってできた構造なので、皮膚に異常があれば、脳にも、発生上の異常がある可能性があります。母斑病と呼ばれる、一連の疾患は、遺伝;つまり染色体にある癌抑制遺伝子が欠損するために、髄膜腫や神経鞘腫が発生すると同時に、皮膚にも母斑(カフェオレ色の皮膚の斑、象皮のような皮膚のたるみ、白斑など)が見られます。いろいろの癌抑制遺伝子欠損が分かっており、将来、欠損した遺伝子を導入することによって、発癌が予防できることが期待されます。
全国脳腫瘍統計から、脳腫瘍発生頻度をみてみると、最も多いのが、髄膜腫で、26%、神経鞘腫が10% 、下垂体腺腫が18%、グリオーマが23%程度です。すべての脳腫瘍の人口あたりの年間発生率は、人口1万人に一人ですから、髄膜腫の年間発生頻度は、10万人に2.6人となります。
悪性脳腫瘍の代表がグリオーマ(神経膠腫)ですが、その中でも悪性は、神経膠芽腫(グリオブラストーマ)で、手術、放射線、化学療法を行っても、50%の患者さんは、9-12 ヶ月以内に死に至ります。グリオーマは、神経幹細胞が何らかの突然変異から、癌化したもので、幹細胞はあちこちへ移動しますから、脳を全部取らないと再発を予防できない、というジレンマがあります。
実験的にマウスにグリオーマを作り出すことが可能です。妊娠17日目の母親に、ニトロソウレアという発癌物質を投与すると、生まれてくるマウスに脳腫瘍ができます。あるいは、生まれたての犬の脳室内にウイルスをたったの10 μl注入するだけで、100%脳腫瘍を作ることができます。
増殖とアポトーシスの規制がとれた幹細胞に、様々な成長因子が働き、遺伝子異常が連鎖して、グリオーマが発生するとすれば、成長因子受容体を標的として、化学療法を行うことによって、グリオーマを治癒させることも夢ではないと思われます。実際、標的が分かった髄芽腫や脳原発悪性リンパ腫の治療成績は上がっています。
頭部外傷
脳はヘルメットのような頭蓋骨で守られています。さらに、頭蓋骨の内には、硬膜、くも膜、軟膜という、3枚の膜が脳を守っています。その上、脳脊髄液が、脳の急激な移動をショックアブソーバーのように守ってくれています。それでも、交通事故、転落事故などの外傷で、骨が砕け、脳がずれると、動脈や静脈が切れて、脳内出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫など、すぐに手術をして血腫を除き、ヘルニアを予防しなければ、致命的となることもあります。
意識レベルの変化を、時間の関数で見ますと、外傷から続けて意識が悪ければ、脳挫傷があると考えられます。外傷後、意識があっても、数時間してから、意識が混濁してくることがあります。急性硬膜外血腫です。すぐに手術をしなければ、生命の危機があります。外傷から、1-2ヶ月後に、足に力が入らず、転びやすくなるのは、慢性硬膜下血腫です。この場合は、頭蓋骨に孔を開けて、血腫を洗浄すると、麻痺はたちまち改善します。
急性硬膜下血腫:脳表と硬膜の間にぶら下がるように存在する、橋静脈が切れて、血が溜り、脳を圧迫します。直ちに開頭-血腫除去術、骨をはづす外減圧術をしないと、死に至ります。手術をしても、生命は助かるかもしれませんが、脳挫傷を伴うと、大きな後遺症が残ります。
急性硬膜外血腫:頭蓋骨骨折があり、骨折線が硬膜の上を走る動脈を傷つけると、頭を打って数時間してから、意識レベルが落ちてきます。緊急血腫除去術をすれば、後遺症なく助かる可能性があります。耳たぶの上の骨の薄いところを打撲した場合は、特にCTスキャンの検査をしておいた方がよいでしょう。
慢性硬膜下血腫:老人の場合、軽微な頭部外傷でも、頭を打って、1-2ヶ月すると、頭痛、片方の足に力が入らない、足下がふらつく、日によって、よい時と悪い時がある、食事を摂ると頭が痛い、摂らないと調子がよい、などの症状が出てきた場合は、慢性硬膜下血腫が疑われます。飲酒家の場合、頭を打った記憶がない時があります。穿頭術で、血腫を除去すると、手術中から麻痺が消失します。頭を打った際に、くも膜が切れ、脳脊髄液がくも膜下腔から硬膜下腔に貯留、これに反応して好酸球が遊走してきて、肉芽や新しく血管が作られます。1-2ヶ月して、新生血管が切れて、慢性硬膜下血腫が出来ると考えられています。局所麻酔で、頭蓋骨に小さな孔を開けて、血腫を吸引するだけで、症状は改善します。
機能的脳外科
パーキンソン病
姿勢が前かがみになり、筋肉が堅くなり、手が震え、顔の表情が仮面のようになる病気で、薬L-ドーパの量がどんどん増えていきます。薬の副作用が出ないように脳の深部に電極を留置し、電気刺激を加えると症状が抑えられます。
顔面痙攣
顔の半分がピクピク痙攣します。曲がりくねった血管が顔面神経の根元を圧迫するために起こります。500円玉大の開頭で血管を減圧するとピクツキは治ります。
てんかん:脳波でてんかん焦点が判明したときは、焦点切除を行い発作が治る場合があります
認知症
正常圧水頭症:認知症、歩行障害、尿失禁が水頭症で出てくる場合があり、手術によって、認知症などの症状が消えることがあります。
