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リウマチ・関節センター|リウマチ膠原病内科

はじめに

「私は冷え性なのだ」と思っているうちに、寒い日の朝、指先が真っ白になるようになった。指が腫れてもいるようだし、放ってもおけない。そこで病院にいったら、「強皮症」という聞いたこともない病気といわれた。

これは、この病気「強皮症」と診断されるまでの経緯の代表的なものです。

あるいは、手がこわばって動かしにくい、関節が痛い、筋肉が痛い、かぜをひいているわけでもないのに咳がよくでる、前はなんともなかった行き帰りの道で息切れがするようになった、などのことをきっかけに、強皮症と診断された方もいらっしゃるかもしれません。

この「強皮症」とはどんな病気なのでしょうか。

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線維成分の過剰が「強皮症」

われわれの身体の大部分は、各種の線維成分でできています。このうちのコラーゲンなどは名前をきかれたことがおありではないでしょうか。

大雑把なたとえでいえば、「線維で織り上げた骨組みの中に、いろいろな働きをする細胞がはまりこんでできている」のが、われわれの身体であるということになります。

こういう言い方をすると線維成分はたんなる「容器」にすぎないという印象を与えるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。

線維成分には、細胞にいろいろな刺激をあたえて、細胞の働きを調節する大事な役割があります。さらに、われわれの身体が出来上がっていく過程では、1つの細胞から眼・鼻・口などさまざまの種類の細胞に分かれていく必要がありますが(分化といいます)、この分化においても線維成分は重要な働きをしていることがわかってきています。

この大事な線維成分は、一度作られたら放っておかれるというのではありません。いろいろな細胞が線維成分を作り出して補います。その一方で、いろいろな細胞が線維成分を分解する物質を放出して、線維成分を削ります。

線維成分は、体の必要に応じて、あるときは補われ、あるときは削られるというダイナミックなコントロールを受けています。

このコントロールがおかしくなると、身体はさまざまの変調をおこします。この変調が原因と考えられている病気の代表的なものが、「強皮症」です。

強皮症では皮膚をはじめとした身体の各所で、線維成分が過剰になってきます。

強皮症の皮膚では何がおこっているか-過剰な繊維成分の影響-

強皮症では、主に血管・皮膚・関節・筋肉・消化管・肺・心臓・腎臓に影響がでてきます。

代表として、皮膚をとりあげてみましょう。強皮症の患者さんの皮膚の断面を顕微鏡でみると、そこにはいくつもの変化が認められます。

皮膚の下にはコラーゲンという線維成分がありますが、それが通常よりもずっと増えています。汗を出す器官である汗腺は、増殖した線維成分に囲まれて萎縮してしまっています。毛根も同じように萎縮してしまっています。毛細血管はある部分ではつぶれていて、ある部分はうっ血して曲がりくねりながら拡がっています。

線維成分のコントロールがおかしくなっているために、さまざまの器官が影響を受けて、正常に機能しなくなっている様子がみてとれます。

他の場所でもこれに類した変化をみることができます。

ここで、大事な注意をしておきますが、これらの変化の程度は人によってさまざまであること、必ずしも上にあげた肺・心臓などすべての臓器に重大な影響がおよぶわけではないこと、を忘れないようにしてください。いたずらに不安にかられる必要はありません。特に、腎臓の病変は、なぜか理由はわかりませんが、欧米人に比べて日本人では非常に少ないことがわかっています。

免疫異常としての強皮症

強皮症で、なぜ線維成分のコントロールの異常がでるのかはわかっていませんが、ひとつには免疫の異常が関係しているといわれています。

身体に侵入してくるばい菌などから身体をまもるシステムのことを「免疫」といいます。強皮症の患者さんの血液を調べると、この免疫のシステムに異常がおきていることがわかります。

免疫の異常-自己の成分に対する抗体の存在-

通常は、身体にとって害になるもの(たとえば、ばい菌など)が侵入してくると、白血球が、これに対する「抗体」というものを作ります。抗体は、ばい菌にくっついて、白血球が効率よくばい菌を破壊できるようにする働きをもっています。

しかし、免疫のシステムに異常があると、破壊する必要のない無害なものや、破壊しては困る自分自身の身体の成分に対しても、白血球は「抗体」を作ってしまいます。

強皮症の患者さんの血液には、このような自分自身の成分に対する抗体が認められます。

代表的なのが抗核抗体の存在です。そのほか、抗セントロメア抗体、抗Scl-70抗体、抗RNP抗体などが認められます。

これらの抗体は、強皮症の診断だけでなく、病型の分類(限局型か全身型か、あるいは混合性結合組織病か)、さらには、どの臓器に病変が起こりやすいか、の手がかりになる検査として利用されています。

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診断と病型分類
強皮症の診断
大基準 手指あるいは足指よりさらに拡がる皮膚硬化
小基準 ①手指あるいは足指に限定した皮膚硬化
②手指尖端の陥凹性瘢痕あるいは指腹の萎縮
(潰瘍を起こした傷跡のことを「瘢痕」といいます。強皮症では、血流障害のために、皮膚の表面の細胞が死んで、えぐれたような傷-潰瘍-ができたり、細胞の成長が悪くなり指先の肉がやせてきます。)
③両側の肺の下部の線維症
(肺線維症については後で説明します)

これらの項目で大基準があてはまる、あるいは小基準3つのうち2つ以上があてはまる場合に、強皮症と診断します。

ただし、発症早期の場合などでは、この診断基準をみたさないこともあり、その場合はレイノー現象などの他の症状の有無や、血液検査で特徴的な抗体の有無を調べるなどして、診断をつけていきます。

病型分類(限局型強皮症、全身型強皮症、混合性結合組織病)

強皮症のもっとも目立つ症状は「皮膚が硬くなること(皮膚硬化)」です。

この皮膚硬化のおこる範囲を基準に、「限局型」と「全身型」にわけられます。皮膚硬化が、手指・足指の先から肘・膝までの間と顔面に限定されるのが、「限局型」です。一方、その範囲をこえて皮膚硬化が拡がっていくのが「全身型」です。

これとは別に、わが国では、強皮症と他の膠原病の症状をあわせもち、血液検査で抗RNP抗体が陽性である場合を、混合性結合組織病として分類するのが一般です。

「限局型」強皮症であれば、肺や心臓などの内臓には影響しない、と誤解している患者さんが時にいらっしゃいますが、あくまで皮膚硬化の範囲にしたがって分けたものであることをおぼえておいてください。

この両者では病変のおこりかた、病変のおきやすい臓器の種類、検査所見などで、違いがあります。

限局型強皮症の病状と経過
冒頭にあげた、寒冷刺激による手指の色の変化が、初発症状になることが多いといわれています。

自転車に乗っていて冷たい風にさらされたり、冷たい水で手をあらったりしたときに、突然手の指がロウのように白くなります。少しあたためると、今度は紫色に変わります。さらには典型的には赤色に変わるのですが、実際には紫色と赤色の混在といった感じの色になったあと通常の皮膚の色にもどるという経過をたどります。

このような症状をレイノー現象といいます。寒冷だけでなく、精神的な緊張もレイノー現象を誘発することがあります。

レイノー現象は、手の指への一時的な血流の障害によるものです。はじめに、血流が悪くなると、血液の赤い色が消えて、指は白色になります。指を温めるなどして血流が部分的に回復すると紫色になります。さらに一時的に血液量が増加して指の色が赤くなった後に、通常の血流量となり、皮膚の色はもとにもどります。

レイノー現象がきつくなると、特に気温の低い冬には、慢性的に指先の血流が悪くなることがあります。血流が悪くなると、指先の細胞は生き続けることができなくなります。すると、指先の皮がむけたり、潰瘍ができたり、ひどいときには黒色化して壊疽といわれる状態になることがあります。

この、レイノー現象の時期を経たのちに、皮膚硬化が起こってきます。

皮膚硬化は、おおよそ3つの時期に分けられます。はじめは「浮腫期」です。朝などに、指がこわばり、程度の差はありますが、指が腫れて太くなります。そのうちに(数週間から数ヶ月で)、指の皮膚が厚みを増し、硬くなってきます。「硬化期」です。硬化した皮膚はだんだんと(数年で)薄くなっていきます。「萎縮期(瘢痕期)」です。

以上は代表的な皮膚変化の起こり方ですが、限局型強皮症の場合は皮膚硬化が目立たず、他の症状が先行していくこともあります。

他の症状として多いのは、逆流性食道炎や小腸の吸収不良、肺高血圧症です。これらの詳細については次ペ-ジの「強皮症の諸症状とその治療法」で述べます。

血液検査では抗セントロメア抗体が陽性になることがあります。

全身型強皮症の病状と経過
レイノー現象も早期からおこりますが、全身型強皮症では早期から、手指や手背の腫れ、皮膚の厚みの増加・皮膚硬化、関節痛がおきてきます。

皮膚の厚みの増加・皮膚硬化は限局性の場合よりも強く、このために手足の曲げ伸ばしが不自由になることがあります。

逆流性食道炎や間質性肺炎・肺線維症、胸膜炎なども、限局性の場合よりも早くから起こってくることが多いようです。これらの詳細についても次ペ-ジの「強皮症の諸症状とその治療法」で述べます。

血液検査では抗Scl-70抗体が陽性になることがあります。

混合性結合組織病の病状と経過
この病気については別の機会に詳しくご説明しようと思います。

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強皮症の諸症状とその治療法

強皮症の諸症状とその治療法について述べさせていただきます。ここでも、大事な注意をさせていただきます。

①1人の患者さんにこれらのすべてが起こるわけでないこと

②起きたとしても、特に治療の必要のない程度の軽症の場合が多いこと

を念頭におきながら、お読みください。

  • 皮膚硬化
  • 末梢循環障害
  • 間質性肺炎・肺線維症
  • 肺高血圧症
  • 便秘
  • 下痢・吸収不良
  • 食道通過障害・逆流性食道炎
  • 心臓病変
  • 腎臓病変
  • 関節病変
  • その他の病変
皮膚硬化

皮膚硬化に対する治療は残念ながらいまだ手探りの状態です。

ひとつには先に述べましたように数年くらいたてば、何もしなくても萎縮期になって皮膚は薄くなりますので、薬が効いたのか、それとも自然な経過か、がわかりにくく、治療効果の判定がしにくいということがあります。また、皮膚硬化とともに増減するような血液検査の項目がなく、数字による客観的な評価ができないことも、判定を困難にしています。

ここではよく行われている治療について説明をします。

ステロイド、代表的なプレドニン5mg錠で2~4錠以下の量が使われることがあります。皮膚の変化の早期、浮腫期から硬化期にかけての時期に使うと、確かに硬化の進行が抑えられ、皮膚が柔らかくなってくるような印象を受けることがあります。

ただし、ステロイドの効果は大規模な調査で確認されたものではなく、長期にわたって進行を抑える効果があるかについても不明です。長期使用による副作用も問題です(ステロイドの副作用についてはこのホームページ上で当科の井上が記述したものをご参照ください)。

私個人としては、早期の場合に限ってプレドニン5mg錠で2錠以下を使うことがあります。効果があればゆっくりと減量していきます。

D-ペニシラミン(メタルカプターゼ)もよく使われている薬です。しかし、近年この薬はアメリカにおける大規模な調査で有効性が否定されてしまいましたので、今後の使用は減るかもしれません。この薬が、コラーゲン(代表的な線維成分)の合成を抑えることが実験室レベルでは確認されていますが、身体という大きなシステムのなかでの有効性は、はっきりしたものではないようです。

メソトレキセートも使われます。近年の調査では、効果があるという報告もでています。

その他の治療、γインターフェロンや、コルヒチン、シクロスポリン(ネオーラル)、アザチオプリン(イムラン)、ビタミンD、血漿交換、幹細胞移植などは有効な場合もあるようですが、はっきりとした効果はいずれも確認されていません。

治療の効果がはっきりしないという話ばかりいたしましたが、悲観したものではありません。現時点においてもすでに線維成分の合成・分解に関わるさまざまの物質が発見されていますので、将来的には、これらの物質の働きを促進したり抑制する形での、治療の進歩が十分に見込めます。

病気がすでに進んでしまった硬化期後期から萎縮期の段階では、あまり積極的に薬物治療がおこなわれることはありません。この時期にはさらに皮膚硬化が進行することはなく、先述しましたように、自然経過で、皮膚は萎縮して薄くなってくるからです。

硬化した皮膚は、汗の出も悪く、皮膚をなめらかにする脂肪分の分泌も悪くなるので、乾燥しやすくなります。乾燥すると痒みがでますので、尿素軟膏(ウレパール)などで、保湿をすることが必要です。

また、萎縮期になって薄くなった皮膚は、ちょっとした刺激でも傷をつくりやすくなっています。しかも、いったん傷をつくってしまうと、血液の流れが悪いので、治るのに時間がかかります。衣服などで皮膚をまもるように、こころがけてください。
末梢循環障害

われわれの身体の組織は、十分な血流がないと、正常な活動を続けていくことはできません。血流が不足すると、まず、その部分の痛み・しびれがでてきます。さらに血流が不足すると、その部分は死んでしまい(壊死)、黒く変色します。

血流が不足することを循環障害といいます。強皮症では体の表面の部分や、端(指先)の部分の血流が不足してきます。このような循環障害を末梢循環障害といいます。

代表的な循環障害は、先に述べましたレイノー現象です。

レイノー現象の循環障害は一過性のものであり、それだけでは薬による治療の対象になるものではありません。しかし、痛みやしびれが強くて、日常生活や仕事に支障をきたす場合には、治療をおこないます。

痛みやしびれは、手足の指だけとは限りません。筋肉なども循環障害の影響をうけます。特に、肩、膝、かかとは、寒冷による痛みの出やすい部分です。

痛みだけではなく、力が入りにくいとか、疲れやすいというかたちで、症状がでることもあります。

さらに慢性の循環障害、たとえば、常に指先が赤紫の色をしていて正常の皮膚の色にもどらない場合などは、壊死に至る危険性がありますので、治療をおこないます。

いったん壊死にいたると、その部分はもうもとにはもどりません。さらに、ばい菌が住みつきますと、抵抗力がないので、ばい菌が体内に侵入し、敗血症といわれる重篤な病気になることもありますので、入院も含めた早急な治療が必要です。

治療は、血管を一時的に広げる薬(血管拡張剤)、血液が固まりにくくなるようにして狭い血管でもよりスムースに流れるようにする薬(抗血小板剤、抗凝固剤)が使用されます。

軽症では、ビタミンE(ユベラ)、EPA(エパデール)などが使われます。

中等症以上では、ベラプロスト(プロサイリン)、シロスタゾール(プレタール)、サルポグレラート(アンプラーグ)、ワーファリンなどが使用されます。

重症例では、血管から点滴で、アルプロスタディル(プロスタンディン、リプル)、アルガトロバン(ノバスタン)、ヘパリンを使用します。

血管拡張剤を服用しているときには、頭痛や動悸、立ちくらみなどの症状がでることがあります。これは正常部分の血管が拡張しすぎていることを意味します。このような場合は、薬の量を減らしたり、よりマイルドな効果の薬に変更するなどして対処します。

この分野では、新しい治療薬が出てきています。血管の内側を覆っている細胞から出る物質のひとつにエンドセリンという物質があります。強皮症の患者さんでは、このエンドセリンの量が増えていることが従来から報告されていました。このエンドセリンが、循環障害や、肺高血圧症の発症に関わっていると考えられています。

ボセンタンというのが、薬剤名ですが、この薬は、エンドセリンの働きを抑える作用を持っています。すでに海外で、強皮症の循環障害、そして強皮症以外の原因によるものも含めた調査ですが、肺高血圧症にも効果があることがわかっています。

わが国でも使えるようになる日は、遠い先のことではありません。

生活上の注意としては、血流を維持するように、①保温②適度な運動(いくら暖かくしていても、じっとしていては効果が十分に得られません)が必要です。

絶対的な温度も大事ですが、相対的な温度差(暖かいところから、急に寒いところに移ること-たとえば夏場のクーラーなど)が、症状を悪くするので注意が必要です。
間質性肺炎・肺線維症

われわれは、空気中の酸素を肺から取り入れて、赤血球にのせて血液の流れとともに全身に送って、エネルギーを生み出しています。酸素がなければ、われわれの身体は活動を続けることができません。

酸素は鼻から取り込まれたあと、気管、気管支という管を通って、肺胞という小部屋にたどりつきます。この小部屋の壁には、血管などの器官が入っていて、壁を通じて酸素は肺胞から血液へと受け渡しされます。この壁のことを「間質」といいます。

この壁に炎症がおきて、壁が線維成分で置き換えられると、酸素が壁を通り抜けて血液の方へいくことができなくなります。すると、酸素不足になり、息切れや呼吸困難といった症状がでてきます。

壁に炎症がおきることを間質性肺炎といい、壁が線維成分で置き換えられること(線維化)を肺線維症といいます。

いったん線維成分で置き換えられてしまうと、もとの酸素を通すことのできるような正常の壁には残念ながらもどりません。ただし、早い段階で炎症を抑えていけば、線維化がおこることを最小限におさえることができます。

したがって、いかに早期に発見するかが治療面でのポイントになります。

早期に現れる変化は、自覚症状では、①息切れ(とくに動いたあとの息切れ)と、②咳(痰のでない咳)です。血液検査ではKL-6、SP-D、LDHという項目が早期に異常値をとります。呼吸機能検査でも早期から「壁」の通りにくさを調べることができます。また、精度の高いものでしたら、CT(コンピューターX線断層撮影)でも変化をみつけることができます。

聴診器で聴診してわかるようになったり、普通のX線撮影(レントゲン)で変化が見つかるようになるのは少し遅れます。

必要に応じて、ガリウムシンチグラムという検査や、肺にいる白血球を採取する検査(気管支肺胞洗浄)をおこなうこともあります。

以上の変化は単独では、間質性肺炎・肺線維症でなくても認められることがあるので、組み合わせて総合的に判断していきます。

そして、現在も病変が進行中(活動期)であれば治療を開始します。

従来、治療の主役はステロイドでしたが、最近ではステロイドの効果を疑問視する意見がでてきており、免疫抑制剤が主役となってきています。

ステロイドの使い方には色々なものがありますが、ステロイド単独で治療をすることは、なくなってきており、免疫抑制剤の補助として使用するようになって来ています。

従来の方法としては、ステロイドを点滴の形で血管から大量にいれる方法がありました。このような方法をステロイドパルス療法といいます。これを3日間程度行ったあと、体重のKg数の5分の1程度の錠数のステロイドの内服(たとえば、体重50Kgの人であれば10錠)を2週程度行い、その後、緩やかに量を減らしていきます。ただし、このようなステロイド大量療法は、効果が不確かなだけでなく、感染症のリスクを増やしてしまうので、過去のものとなってきています。

現在ステロイドを使用する場合は、このような大量を使わずに、以下に述べる免疫抑制剤の補助として、体重のKg数の10分の1以下の錠数ではじめ(体重50Kgの人であれば5錠、プレドニゾロンでいえば、25mg)、2ヶ月くらいで、1日2錠程度にまで、減らしていく方法をとります。

免疫抑制剤だけで、ステロイドを使用しないやり方もあり、今後はこの方法が主流となると思われます。

それでは、現在の主役、免疫抑制剤とはどのようなものなのでしょうか。

代表的なのはシクロフォスファミド(エンドキサン)です。使用方法はさまざまですが、点滴で血管から入れる方法と、内服で服用する方法があります。

点滴の場合、身長と体重から、その人の体表面積を計算し1㎡あたり500~750mgの量を、1回に使います(大体700~1000mg程度です)。これを、約4週間ごとに繰り返します。何回繰り返すかは、まだ統一された見解がありません。病気の活動性と副作用の有無をみながら、回数や使用間隔、中止の適否を決めていきます。

内服では1日量100mg程度(体重のKg数の2倍程度)を1日1回服用します。点滴よりも、内服のほうが、効果があるとの報告もあります。

シクロフォスファミドの代表的な副作用は、出血性膀胱炎と、ばい菌に対する抵抗力が低下することです。

出血性膀胱炎とは、膀胱の粘膜が傷んで、そこから出血するもので、進行すると、排尿に支障をきたすようにもなります。エンドキサンの内服の場合、積算量が増えてくると、出血性膀胱炎のリスクも高まってきますので、あまり長期にわたって使用を継続しないように注意していきます。点滴の場合は、内服の場合よりもリスクは少ないことがわかっていますので、近年では点滴での使用が増えてきています。点滴の場合、施行日は水分を十分に(点滴終了後、就寝までに食事以外に1~1.5Lの水分摂取が薦められます)とって、膀胱を守ることが必要です。

ばい菌に対する抵抗力がおちますので、使用中はうがいの励行や、人ごみを避けるなどの感染予防が必要です。また、風邪症状が出たときは、早めにかかりつけの医療機関を受診してください。予防的にST合剤(バクタ)を1週間に3日内服することもあります。点滴の場合、点滴終了後7~14日後にもっとも抵抗力が落ちますので、特にこの期間は注意が必要です。

その他の免疫抑制剤としてはシクロスポリン(ネオーラル)が併用されます。体重のKg数の3倍程度のmg数(たとえば体重50Kgであれば150mg)の量を1日2回に分けて内服します。

体への吸収がやや不安定であることと、量が多すぎると腎臓の血管を傷めてしまうことから、適宜、血液中のシクロスポリンの量を測って、服用量を調節します。量を測るときは、前日の夜に薬を服用したのち、当日の朝は服用せずに医療機関を受診していただき、血液を採ったあとで服用していただきます。

シクロスポリンの代表的な副作用は、腎臓の血管を傷めてしまうことと、ばい菌に対する抵抗力が落ちてしまうことです。

腎臓の血管を傷めないようにするためには、先述しましたように、量が多すぎないようにすることと、服用があまり長期にわたらないようにすること、1ヶ月に1回程度血液検査で腎臓の状態をみて、影響がでているようであれば、薬を減量・中止することが必要です。

そのほかに使用される免疫抑制剤としては、メソトレキセート、アザチオプリン(イムラン)などがあります。

薬による治療以外に、間質性肺炎・肺線維症は、ばい菌による気管支炎や肺炎をきっかけに悪くなることがありますので、感染予防(うがい・休養など)が必要です。

また、かぜの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診していただき、こじらせないようにすることも必要です。

米国では、肺線維症のある強皮症の患者さんには、インフルエンザと肺炎球菌の予防接種をすることを推奨しています(日本では肺炎球菌については、保険で承認されていません)。

また、不幸にして線維化が進んでしまって酸素が十分に体内に入らなくなったとしても、酸素吸入によって身体の活動性を維持することができます。在宅酸素療法といい、ご自宅に酸素の濃縮装置を設置していただく方法です。ポータブルの小さな酸素ボンベもあり、屋外での活動も可能です。

このほかの、肺病変として、肺の外側を覆っている膜(胸膜)に炎症を起こし、肺と胸壁との間に水がたまることがあります。少量の場合は治療をしませんが、量が多いときには、ステロイド中等量以下(プレドニゾロン5mg錠で4錠程度)を使用します。
肺高血圧症

血液のなかの赤血球という細胞は、酸素を運ぶ大事な働きをしています。赤血球は身体の各所で、酸素を必要な場所に受け渡して、心臓にもどってきます。

そして、心臓から「肺動脈」という管を通って、肺にいきます。ここで、「壁」(間質)越しに、肺胞から酸素を受け取ります。

肺で酸素を受け取った赤血球は、また心臓にもどってきて、今度は全身へと送り出されて、身体の各所で酸素の受け渡しを行います。

心臓から「肺動脈」を経て肺へ行く経路が、何らかの病変のために通りにくくなると、肺動脈の血圧が高くなります。これを「肺高血圧症」といいます。

肺高血圧症の状態では、血液が肺に行きにくくなりますので、血液中の赤血球は酸素を十分に受け取ることができなくなります。

その結果、身体の必要な部分に十分な酸素を供給することができなくなります。こうなりますと、動悸や息切れ、めまい、立ちくらみ、ひどいときには失神といった症状がでてくるようになります。

また、心臓は通りにくいところを無理をして、血液を肺に送らなければならないので、だんだんと疲れて弱ってきます。こうなりますと、むくみや、前段にあげた諸症状がいっそうひどくなります。

強皮症では、この肺高血圧症が単独でも起こりますし、肺線維症の結果としても起こってきます(線維化した肺は血液が通りにくくなりますので、肺高血圧症になります)。

肺高血圧症に対する治療は、2種類に分かれます。

1つは、一般の高血圧症のように、血管を広げて通りをよくするということです。使用される薬剤も一般の高血圧症の治療薬と重なります。ただし、肺高血圧症の場合は、ベラプロスト(プロサイリン)など、特別な薬も使用されます。

もう1つは、末梢循環障害のところでも述べましたように、血液が固まりにくくなるようにして、通りにくい血管でもよりスムースに通れるようにする薬(抗血小板剤、抗凝固剤)が用いられます。シロスタゾール(プレタール)、サルポグレラート(アンプラーグ)、ワーファリンなどです。

必要に応じて、酸素吸入も利用されます。肺での酸素の受け取りをしやすくして身体の酸素不足を改善します。

心臓に負担がかかっているときは、利尿剤などの心臓の治療薬も併用します。

以上のような従来の治療に加えて、非常に有効性の高い治療法が開発されています。それはエポプレステノール(フローラン)という、血管拡張剤です。

ただし、この薬は、体内に入るとすぐに分解されてしまうので、血管へのルートを設定して、24時間中ポンプで薬液を送り続けなければなりません。また、何らかの理由で薬が中断されてしまうと、数時間で、逆により強く肺の血管が閉まってしまうことがあるといわれています。まだ、どなたでも利用できるというものではありません。

また、末梢循環障害のところで紹介しました、ボセンタンも、これから導入されるであろう、有効な治療です。この薬は、内服薬なので、簡単に使用できるのも、大きなメリットです。

生活上の注意としては、保温を心がけることが第一です。それから、いきむような動作は、胸の中の圧力を高めて、肺の血管をおさえつけ、肺高血圧症をいっそう悪くしますので、避けるように注意が必要です。その他の行動制限が必要な場合もありますので、主治医の先生の指示を遵守してください。
便秘

食道と同じように、腸の動きも悪くなることがあります。この場合、おなかが張ったり、便秘を起こしたりします。

治療は通常の便秘と同じです。

動きが非常に悪いときには(まるで、腸が閉じてしまったかのような状態になるので、偽性腸閉塞といいます)、入院で、絶食、点滴などの治療をすることもあります。

生活上の注意は、十分な水分摂取、適度な運動など、通常の便秘と同様です。
下痢・吸収不良

便秘とは逆に、下痢になることがあります。

われわれの腸の中にはたくさんの細菌(腸内細菌)が住み着いています。腸内細菌は、ビタミンを合成してくれるなど、通常は、われわれにとって有用な存在です。

腸の動きが悪くなると腸内細菌が必要以上に増えてきます。こうなると、細菌にじゃまされて、消化されたものがちゃんと吸収されなくなり(吸収不良)、下痢となります。

したがって、増えすぎた腸内細菌を殺すような抗生剤を使えば、この下痢はおさまってきます。よく使われる抗生剤としては、カナマイシン、ミノサイクリン(ミノマイシン)、アンピシリン(ビクシリン)などがあります。
食道通過障害・逆流性食道炎
患者さんのなかには、胸やけや、食べたものが胸にひっかかっている感じがする、ひどいときには、うまくのみ込めなくて吐いてしまう、といった症状が出てくる方がいらっしゃいます。

食道というのは、口と胃をつないでいる管をさします。正常の食道は、口から入ってきた食べ物を受けて、リズミカルに動いて、食べ物を効率よく胃のほうへ送ります。

ところが強皮症の場合は、食道を動かす筋肉に線維成分が過剰に沈着して、動きが悪くなってしまいます。

こうなると、食べ物、特に固形物や脂肪の多いものが、食道に停滞するようになってしまいます。

また、食道と胃の連結部では、通常は、胃のほうから胃酸が食道のほうに入って(逆流)こないように、筋肉で閉めています。ところが強皮症の場合は、この筋肉が弱ってしまい、胃酸が逆流してくるのを防げないようになります。

すると、食道の粘膜が傷ついてしまい、痛みとして感じられます。逆流の程度がひどくなると、のどの痛みや、咳といった症状がでてくることもあります。これが逆流性食道炎です。

食道通過障害・逆流性食道炎の治療には3つの種類があります。

1つは食道の動きを刺激する薬を使う方法で、モサプリド(ガスモチン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン)イトプリド(ガナトン)、トリメブチン(セレキノン)などが、あります。

もう1つは胃酸の分泌を抑えてしまう方法です。H2阻害薬(ガスターなど)、プロトンポンプ阻害薬(パリエットなど)が使われます。特に、後者が広く使用されるようになってから、逆流性食道炎の患者さんの苦痛は大幅に軽減されてきています。

さらに食道の荒れた粘膜を保護するために、スクラルファート(アルサルミン)、アルジオキサ(イサロン)、アルギン酸ナトリウム(アルロイドG)、エカベトナトリウム(ガストローム)などが使われます。

生活上の注意としては、食べた後、すぐに横にならず、1~2時間は、頭のほうがお腹より高い位置にあるような姿勢をとることが勧められます。べつに立っている必要はありません。何かにもたれていても結構です。夕食時間を早めにして、就寝前には食物をとらないようにすることもひとつの方法です。

一回の食事の量を少なくして、食事回数をふやすのが有効な場合もあります。

また、先述しましたように、脂肪の多いものを避ける工夫も必要です。お好きな方にはお気の毒ですが、てんぷらやチョコレートが症状を悪くする代表的な食べ物です。
心臓病変

心臓でも、線維成分がふえてくることがあります。そうしますと、心臓の筋肉の働きが悪くなったり、心臓のリズムを調節する信号がうまく伝わらなくなってしまうことがあります。

筋肉の働きが悪くなると、全身に血液を送り出し、そして回収するという心臓の大事な働きが十分にできなくなってきます。その結果、動悸、息切れ、むくみといった症状がでてきます。

リズムを調節する信号がうまく伝わらないと、心臓は血液を送りだすためのポンプ運動を適切な回数でおこなうことができず、前段と同様に十分な働きができなくなってしまいます。ただし、治療が必要になるほど悪くなることはあまりありません。

この2つの病変の治療については、一般的な心臓病の治療に準じて行われます。

心臓を覆っている袋(心膜)に炎症がおきて、水がたまることもあります。心膜炎といいます。これについては、たまっている水の量が少ないときは、心臓の働きに特に影響しませんので、何も治療はしません。ただし、大量に水がたまって、心臓を圧迫しているときには、ステロイドを使用します。

また、間質性肺炎・肺線維症、肺高血圧症のところで述べましたように、肺の病変にともなって、心臓の働きが悪くなることがあります。この病変の治療につきましては、それぞれのところで述べました。
腎臓病変

腎臓の血管の線維化が進行すると、高血圧になったり、腎臓の働きが悪くなったりすることがあります。貧血(血液中の赤血球の数が減ること)や、血小板の数が減ることもあります。

従来は生命の危険性の高い病変でしたが、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(レニベース、カプトリルなど)が使用されるようになってから、大幅に危険性は減ってきています。

この病変については、限局型強皮症の人にはほとんどおきませんし、他の箇所でも述べましたように、日本人では特に頻度が少ないので、それほど恐れる必要はありません。

アンギオテンシン変換酵素阻害薬は、強皮症の他の合併症の治療薬としても使われることがあります。これとは別に治療薬であるD-ペニシラミン(メタルカプターゼ)の副作用として、尿に蛋白がおりることがあります。これについては、薬を中止するだけで、たいていはもとにもどります。
関節病変

強皮症では、関節の痛みや腫れをおこしてくることがよくあります。とくに、皮膚の硬化が認められるより前に関節の症状がでた場合には、関節リウマチと紛らわしいこともあります。

幸いなことに、強皮症の関節病変は、関節リウマチと違って、関節の変形をきたすことがほとんどありません。

治療は、消炎鎮痛剤や、少量のステロイド(プレドニン5mg錠で1~1.5錠程度)を用います。保温などの血流改善処置が効果がある場合もあります。

また、皮膚の硬化のために関節が動かしにくくなったり、動かすときに痛みがでることがあります。これに対しては皮膚硬化のところで述べたような薬物治療をおこないます。それだけでなく、暖めながら、関節を伸ばすような運動を毎日繰り返しておこなうことも、改善効果があるといわれています。
その他の病変

強皮症では、唾液の出が悪くなることがあります。唾液を出す唾液腺という部分が線維化にともない、萎縮することによるものです。このために、食べ物の呑み込みや消化・吸収が妨げられることがあります。

また、唾液が出にくいと、虫歯を起こしやすくなります。

唾液が出にくくなる膠原病は、このほかにシェーグレン症候群がありますが、これを合併することもあります。シェーグレン症候群については、当ホームページの別項をご参照ください。

筋肉が障害されることもありますが、一般的にはそれほど強いものではありません。筋肉の障害が強いときは、混合性結合組織病という別の病型の可能性があります。

むしろ、治療薬であるD-ペニシラミン(メタルカプターゼ)の副作用として、筋肉の障害を起こすことがあるので注意が必要です。薬を中止すれば、もとにもどります。

肝臓に治療を要するような病変が起こることは少ないとされています。起きた場合はウルソデオキシコール酸(ウルソ)という薬が有効です。

甲状腺という組織の働きが悪くなることもあります。線維成分がふえることによる萎縮だけでなく、橋本病とよばれる慢性の甲状腺の炎症を合併することも多いようです。治療が必要な場合は、甲状腺ホルモンの内服薬による補充をおこないます。
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おわりに

強皮症の、病態とその対処法についてのあらましを述べさせていただきました。ずいぶん、身体のいろいろな場所に病変が起こりうるので、みなさんに不安を与えてしまったのではないかということを心配しています。

しかし、治療法は年々進歩しています。昔は、強皮症は生命の危険性の高い病気でした。米国での例を提示いたします。これは、病気の診断がついて5年後に、どれだけの患者さんが生存しているかをみたものです。1960年代には、34%の人しか生存していませんでした。しかし、80年代には73%の人が生存するようになりました。さらに、90年代では86%の人が生存しているようになってきています。10年後でも74%の人が生存しています。

この30年の間の進歩は素晴らしいものがあります。

これらの数字を単純に日本人にあてはめることはできませんが、進歩しているということには、日本でも違いはありません。

現在も、新しい治療法がいくつも開発中です。

さらなる治療の発展により、強皮症の患者さんの苦痛・苦悩が、現在よりも軽減していくことをお約束して、本稿を閉じようと思います。 本稿を作成するにあたっては以下の著作を参考にさせていただきました。

William J. Koopman: Arthritis and allied conditions 14th ed.,Lippincott Williams & Wilkins
John H. Klippel: Rheumatology 2nd ed.,Mosby
Shaun Ruddy: Kelly’s Textbook of Rheumatology 6th ed.,Saunders
Michael H. Weisman: Treatment of the Rheumatic Diseases 2nd ed.,Saunders
Peter J. Maddison: Oxford Textbook of Rheumatology 2nd ed.,Oxford medical publications
リウマチ科診療マニュアル、科学評論社
Peter Tugwellら:Evidence-based rheumatology, BMJ

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