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リウマチ・関節センター|リウマチ膠原病内科

関節リウマチの診療2005-総論編-

もくじ

  • はじめに-転換期にあるリウマチ診療-関節機能の維持
  • 早期診断
    (早期診断への取り組み・どうしても残る診断のあいまいさ・診断のタイムリミット-治療開始はどのくらいの時期が望ましいか・診断があいまいな場合の対応)
  • 早期治療
    (早期治療-どのくらいの強さの治療が必要か・CRPは万能の指標ではない・重視されるべき「関節の腫れ」・関節リウマチの病態と治療のターゲット・治療薬の3本柱-治療の中心は抗リウマチ薬(生物学的製剤を含む)
  • 副作用について
    -使ったことによる不利益、使わなかったことによる不利益-
  • おわりに
はじめに-転換期にあるリウマチ診療- 関節機能の維持

関節リウマチの診療は、現在大きな転換期に遭遇しています。従来の治療の目標は、痛みを抑えるという消極的なものでしたが、現在は違います。関節破壊の進行を抑制し、関節の機能(運動機能)を維持して、生活のクオリティを確保するという積極的な治療目標を、現在の専門家は追及しています。

この治療目標の転換に大きな役割を果たしているのが、生物学的製剤といわれるグループの薬剤です。インフリキシマブ(商品名レミケード)、エタネルセプト(エンブレル)が現在、保険適応となっている生物学的製剤です。これらの薬剤は、従来の抗リウマチ薬にくらべて、効果が格段に高いために、先に述べました積極的な治療目標が実現しやすくなりました。

しかし、この治療目標の転換は、新しい生物学的製剤というハードウェアの転換だけでおこってきたものではありません。以前から、リウマチの診療に携わる者は、関節機能(運動機能)維持という目標を常に意識していました。どのようにすれば、関節破壊の進行を、より効果的に抑制できるのか?この質問に対する答えは現在においても完全な解答が示されているわけではありませんが、2つのヒントが浮かび上がってきています。

1. 早期診断・早期治療
関節リウマチが発症したら、可能な限り早期に治療したほうが、その後の経過がよい
2. より強力な治療
発症早期に治療する場合でも、可能な限り強い治療をしたほうが、その後の経過がよい

この2つのヒントを活かすために、現在の関節リウマチの診療がどのように行われるようになってきているのか、ご説明していきます。

早期診断・早期治療の実現へ

診断のことから、説明を始めます。そして、治療のタイミング、治療の強さについてお話しをしていきます。

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早期診断
早期診断への取り組み

関節リウマチの診断をするためは、経過、所見、血液検査、画像検査の所見を総合的に判断する必要があります。「これさえあれば関節リウマチ」という具合にはいきません。関節レントゲン検査で、典型的な骨の変化が出ている場合には、それだけで診断をつけることが可能な場合がありますが、ほとんどの場合は、複数の所見を総合して判断します。したがって、まだ個々の医師の経験などで左右される部分が多いのが現実です。それでも、進歩がないわけではありません。

血液検査(炎症反応や免疫の異常など)と、関節の炎症所見の2点で、診断技術の進歩が認められています。

関節リウマチ特有の血液検査異常-抗CCP抗体

残念ながら、これさえあれば関節リウマチ間違いなしというような血液検査項目はありません。よくいわれるリウマトイド因子(リウマチ因子)にしても、特に発症早期の段階では6割程度の患者さんでしか陽性になりません。それどころか、他の疾患でも(その中には、治療不要のものもあります)陽性になることがあります。

そこで、現在、リウマトイド因子にかわるものとして、抗CCP抗体といわれるものが注目されています。抗CCP抗体はリウマトイド因子に比べて、発症早期から陽性であることが多く、なおかつ、ほかの疾患で陽性になることが少ないという、優れた検査項目です。近い将来に保険適応となって、診療の現場で有効に利用されると思われます。しかし、抗CCP抗体でも100%のものではありません。

関節の炎症を早期にとらえる-関節MRI、関節超音波エコー

関節リウマチは、さまざまの臓器に影響が及びうる炎症性疾患ですが、やはり、関節の炎症が主体の疾患です。炎症とは、何らかの体の異常(病原微生物の侵入、さまざまな理由による組織の破壊など)に対応して、血管の性質が変化し、局所に細胞が集まってくる反応です。炎症を起こしている場所は、痛み、腫れ、発熱、発赤として感じられます。

関節が炎症を起こしているかどうかの判断は、医師による触診(手で触って病気の所見を確認すること)で行っています。柔らかく関節が腫れ、押さえると痛みがあるというのは、炎症の典型的な所見です。関節が炎症をおこしていることを、触診より早期に(より軽い段階で)確認できれば、関節リウマチであることを、より早期に診断することが可能です。

現在、触診ではわからない炎症の早期診断に有用なものとして、2つの検査が注目されています。「関節MRI」です。コストの問題など、まだまだ検討課題がありますが、今後、判断困難な場合などで早期診断に利用されていくのは間違いありません。もう1つは「関節超音波エコー」です。検査をおこなうものの技量に左右される部分が多く、まだ一般的に使用されるまでにはいたっていませんが、コストも低廉で、今後は広く普及していきそうです。

どうしても残る診断のあいまいさ

上記のような検査が広く利用されるようになっても、現在見通せる範囲では(将来においても)、他の全身性の関節炎症をきたす疾患を、関節リウマチだと誤って診断することは、十分にありえます。たとえば、膠原病に属する疾患では、初期には関節リウマチと全く区別がつかない(現在の診療技術では)場合がいくらでもあります。また、関節リウマチの診断基準はみたさないものの、関節破壊が進行していく病態もあります(分類不能関節炎)。

診断のタイムリミット-治療開始はどのくらいの時期が望ましいか

先ほど、「できるだけ早く」治療をしたほうがよい、といいましたが、具体的にどれくらいの時期で治療を始めたら、その後の経過がよいのでしょうか。
まだ、この問題への確定的な解答は出ていません。しかし、支持を受けている意見として、以下のものがあります。

診断が確定したら、直ちに治療を開始する
これができれば、理想的です。
診断が確定したら12週以内、遅くとも24週以内に、治療を開始する
かかりつけの医師からの紹介で、この期間のうちに専門医に受診して、治療計画を組み立てる場合が、これにあたります。
診断があいまいな場合の対応

前に記しましたように、診断の確定が、なかなか難しいこともあります。このような場合は、見切り発車のように関節リウマチの治療をするべきでしょうか?これは、個々の医師の判断、患者さんの状態にもよると思われます。

私個人としましては、12週間以上続いている多発性の関節炎症に対しては、たとえ関節リウマチの診断基準をみたさなかったとしても、関節リウマチに準じた治療をしてよいのではないかという考え方です(腎機能障害や高齢などの副作用のリスクの高い場合は除きます)。

特に、手の関節炎症を認める場合には、最終的に(9ヶ月から12ヶ月くらいの経過で)関節リウマチの診断基準をみたすことが多いといわれています。そして、12週以内で抗リウマチ薬による治療を始めた場合は、9ヶ月目で治療を始めたよりも関節破壊が少ないことも示されています。治療を支持する意見としては、以下のようなものがあります。

現時点では、いったん破壊されてしまった関節を薬物治療で修復することが、ほとんど不可能であり、発症早期という治療の好機を逃したくない。
万一治療不要の疾患であったと判明したら、その時点で治療を段階的に中止していけばよい(治療を中止しても後遺症の残るような副作用は、現在の治療ではまれです。また、これは、私の個人的な方針ですが、診断が不確定の場合には、少し弱めの副作用リスクの少ない薬剤を用いて治療をおこなっています。)
関節リウマチと似た関節症状を起こす疾患の治療方法は、関節リウマチの治療と共通するものが多く、過剰な治療になることは少ない。

もちろん、治療は医療従事者と患者さまとの協力で成り立つものですから、私の考え方を押し付けることはいたしません。

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早期治療
早期治療-どのくらいの強さの治療が必要か

理想をいえば、治療は強ければ強いほどいいわけですが、副作用の危険性などを考えると、そうもいっていられません。なんらかの尺度によって、治療が十分かどうかを決定する必要があります。

最終的な治療の効果判定は、関節の破壊(変形)がおこるかどうかですが、これは、数ヶ月から年単位でおこってくることですので、日々の治療方針の決定の尺度としては、時間がかかりすぎます。しかも、変形が起こってしまった後で対応するのでは、その時点で治療目標は後退することになります。 よく用いられる指標としては以下のようなものがあります。

自覚症状 関節の痛み、こわばりの持続時間、体のだるさなどの生活のクオリティの低下の程度
他覚的所見 関節の圧痛(押さえたときの痛み)、関節の柔らかい腫れ
血液検査 血沈(赤沈)、CRP、MMP-3、血清アミロイドA、IgG型リウマトイド因子など
CRPは万能の指標ではない

このなかで、血液検査の「CRP」が、一般に重視されているような印象を受けます。当科を受診される患者さんからも、「こんなに関節が痛いのに、「CRPが正常値だからリウマチは落ち着いている」といわれて、取り合ってもらえませんでした」という述懐を受けることがあります。

CRPは、確かに客観的でよい指標ですが、患者さんによってはリウマチの活動性を十分には反映しない場合があります。CRPが正常値でも、関節破壊に至ることは十分にありえます。
むしろ、CRP正常化は、関節破壊を防止するための最低条件といえるかもしれません。

血液検査のグループの中では、MMP-3、血清アミロイドAのほうが、一般には敏感な指標です。また、血沈(赤沈)は、現在では軽視されがちですが、長期的な変動を反映する点では、CRPより優れた面もあることが指摘されています。

重視されるべき「関節の腫れ」

ある関節が、将来壊れていくかどうかを予測するのにはどうしたらよいか?この問題に対する答えはまだ出ていません。早期診断の項でお話した、関節MRIなども、ひとつの予測の手段として注目されています。

ただし、コストの問題から、何回も繰り返して検査できるものではありません。 日常診療でも簡単に利用できる手段としては、「その関節が柔らかく腫れているかどうか」ということが指摘されています。柔らかく腫れている関節は、その後壊れていく可能性がより高いことが、さまざまの治療スタディを通して、確認されてきています。

まとめますと、「CRPなどの血液検査の正常化とともに、関節の柔らかい腫れがなくなるようにすることが、治療の目標である」ということになります。これは、決して容易な目標ではありません。

以下の部分では、この目標を達成するための具体的な治療の方法についてお話していきます。

より効果の高い治療の実現へ

具体的な治療の説明に入る前に、関節リウマチに関しての基本的な知識をまとめておきます。

関節リウマチの病態と治療のターゲット

患者さんの関節では、いろいろな細胞が活性化し、増殖しています。これらの細胞は、直接に、あるいは放出する物質の作用を介して、関節の構造を壊していきます。関節構造を壊すだけでなく、痛み、発熱、腫れなどの苦しい自覚症状も、これらの細胞の活性化が原因です。 現在、いわれている悪役は、以下のグループの細胞です。
①T細胞、B細胞といわれるリンパ球
②関節の内側を覆っている滑膜細胞
③骨を吸収する破骨細胞

これらの悪役は、お互いに影響しあって、関節の構造を壊していきます。これらの、活発化した細胞を鎮めて、正常の状態に持っていこうとするのが、関節リウマチの治療の目標です。

これらの細胞の多くは、「白血球」といわれる細胞のグループに属します。「白血球」は、「免疫」という「病原微生物から体を守るシステム」の中心となる細胞です。ですから、白血球を鎮める働きを持つ関節リウマチの薬剤は、「免疫抑制剤」・「免疫調整剤」といわれることもあります。

治療薬の3本柱-治療の中心は抗リウマチ薬(生物学的製剤を含む)

関節リウマチの治療では3種類の薬剤が使用されます。その3つを以下にお示しします。< 1:非ステロイド性消炎鎮痛剤
2:ステロイド剤
3:抗リウマチ薬(生物学的製剤を含む)

このなかで最も大事なのは抗リウマチ薬です。では、順番にご説明していきましょう。

非ステロイド性消炎鎮痛剤

いわゆる「痛み止め」、「熱さまし」のことです。痛みや熱の原因となる「プロスタグランジン」が作られないようにして、これらの症状を軽減するのが、この薬剤の使用目的です。患者さんの苦痛を軽減して、生活のクオリティを維持するために、有用な薬剤です。服用後、30分程度で効果が自覚できるのも、有用性を高めています。しかし、欠点もあります。

①関節リウマチの活動性が高い時期には、非ステロイド性消炎鎮痛剤だけでは、痛みを十分に抑えきれない
このために、以下に述べるステロイド剤が使用されます。

②関節破壊が進行していくのを防げない
このために、以下に述べる抗リウマチ薬が使用されます。
また、限定的にステロイド剤が使用されることもあります。

③胃や十二指腸などの消化管粘膜を傷つけることがある

この副作用を軽減させるために、「COX-2選択性をより高めた」非ステロイド性消炎鎮痛剤というものが、推奨されていました。 しかし、この種類の薬剤は心筋梗塞などの血栓性(血の固まりが血管を詰まらせる)疾患の発症リスクを高めてしまうことが米国などで明らかになりました(日本では未発売の薬剤)。

米国人は、そもそもが、日本人より心筋梗塞のリスクの高い国民ですので、この結果を単純にわが国に当てはめることはできませんが、注意が必要です。 現在では、胃薬で効果の高いものがいくつもありますので、消化管粘膜に対する副作用には胃薬の追加で十分対応できますし、「COX-2」選択性へのこだわりは薄れていくものと思われます。

また、飲み薬ではなく、座薬や塗り薬、貼り薬を使うことでも、この副作用を軽減できます。

④長期使用により、腎臓の働きが低下することがある
このため、病状が改善したら早めに減量・中止していくように留意します。また、長期的に使わざるを得ないときは、作用時間の短いものを選んで、「作用の空白の時間」を作るように意識していきます。

不幸にして、腎臓の働きが低下してしまい、なおかつ痛みが強いときは、ステロイド剤を使用します。ステロイド剤は、腎臓が悪い人でも、通常と同じように使用できる薬剤です。

ステロイド剤

なにかと非難されることの多いステロイド剤ですが、関節リウマチの治療にはやはり有用性の高い薬剤です。以下の2点がポイントです。
①確実で、速やかな鎮痛効果

②限定的には関節破壊抑制効果もある

ステロイド剤使用のメリット
確実で、速やかな鎮痛効果
「運動機能の維持が治療の主たる目標」とはいうものの、痛みを無視することは絶対にできません。関節リウマチの痛みは、非ステロイド性消炎鎮痛剤だけでは、なかなか抑えられるものではありません。

最も効果の高い生物学的製剤でも、痛みを抑えるまでには、一般的には数日から2週間かかりますし、生物学的製剤以外の抗リウマチ薬では、2週間から8週間くらいかかります。

特に、発症早期の活動性の強い時期に、非ステロイド性消炎鎮痛剤と併用して、プレドニゾロン換算で、10mg以下の量を使用します。 症状に応じて、1日量を2~3回に分割して服用することもあります。

限定的な関節破壊抑制効果
「関節破壊の進行を抑制する作用はない」と一般的には紹介されますが(私もそういいます)、これは、長期的に使用される低用量での話で、より多くの量を使用すれば関節破壊を抑制する効果があることが示されています。その境界は、プレドニゾロン換算で7.5~10mgくらいのところにありそうです。

しかし、この量を長期にわたって使用すると、生活習慣病の増悪・発症などの副作用がでてきてしまいます。

また、発症後1年以内くらいが、有効性が高く、その後の時期以降では効果が弱くなっていくという報告もあります。一部では、発症早期に大量に使って、短期間で減量・中止していくという方法が試みられており、有効性も示されています。

ただし、この場合も、当然のこととして抗リウマチ薬が併用されており、中長期的には、抗リウマチ薬が治療の主役を担うことになります。一般的には、抗リウマチ薬が十分に効いてくるまでの、治療開始から3~6ヶ月の期間を中心に使用すべきものでしょう。また、使用量については、初期には7.5~10mgも容認できますが、可能な限り速やかに5mg以下に、そして、さらなる減量・中止をはかっていきます。

しかし、現実には減量・中止が困難なことがしばしばあります。米国でも、現実には3割程度の患者さんがステロイド剤の長期使用を、余儀なくされているとの報告もあります。長期使用にいたる原因としては、

①抗リウマチ薬が十分に効いていない
②副作用などのために抗リウマチ薬を十分に使用することができない
などがあげられます。

このような場合は、ステロイド剤による副作用の対策を十分におこないながら使用していきます。
ムーンフェイスなどは、対策の立てにくい副作用ですが、骨粗鬆症、高コレステロール血症、糖尿病については、従来よりも対応がしやすくなってきています。

ステロイド剤の副作用への対応
骨粗鬆症
ビスフォスフォネート製剤(商品名、ダイドロネル、ボナロン、フォサマック、アクトネル)の導入により骨量の減少を抑制できるようになってきています。

高コレステロール血症
従来より強力な薬剤の登場で、高コレステロール血症とそれにより惹き起こされる動脈硬化が予防できるようになってきています。

また、高コレステロール血症の治療薬の一部には、強力なものではありませんが、関節リウマチの活動性を抑制する作用があることがわかってきています。

糖尿病
インスリン抵抗性改善作用のある内服薬(飲み薬)の導入で、従来ではインスリンの注射が必要であった患者さんでも、血糖コントロールが可能になってきています。

治療の主役-抗リウマチ薬(生物学的製剤を含む)

抗リウマチ薬は、関節リウマチ治療の根幹を成す薬剤です。抗リウマチ薬に属する薬剤はいくつもありますが、大きく分けると、生物学的製剤とそれ以外に分けられます。それぞれのグループの薬剤の商品名を挙げます。

生物学的製剤 「レミケード」、「エンブレル」
それ以外の薬剤 「リウマトレックス(メソトレキセート)」、「アラバ」、「アザルフィジンEN」、「リマチル」、「プログラフ」、「シオゾール」、「リドーラ」、「ブレディニン」、「モーバー/オークル」、「メタルカプターゼ」、「カルフェニール」

また、承認はされていませんが、以下の薬剤も抗リウマチ薬として用いられます 「イムラン」、「ネオーラル」、「ミノマイシン」、「エンドキサン」

抗リウマチ薬使用のメリット
抗リウマチ薬は関節破壊を防止するこれらの薬剤は、「関節リウマチの病態と治療のターゲット」の項で、ご紹介した悪役、①T細胞、B細胞といわれるリンパ球、②関節の内側を覆っている滑膜細胞、③骨を吸収する破骨細胞、の活動を抑えて、関節破壊の進行を防止する作用をもっています。
もちろん、これらの細胞の活動を抑える結果として、痛みなどの自覚症状も改善します。
単に痛みを抑えるだけでなく、関節の機能を維持して、生活のクオリティを確保するという現在の治療目標に適合した薬剤です。

抗リウマチ薬の問題点
効果面の問題
効果がでてくるまでに数週間の時間がかかる(早く効く生物学的製剤でも数日から2週間程度)。この間、痛みなどの自覚症状が残ったままとなる。

すべての患者さんに効果があるとは限らない、また、どの患者さんにはどの薬剤が有効なのかが、前もってわからない。

効果があっても限定的で、関節破壊の進行を止めるまでには至らないことが多い。

副作用の問題
副作用の危険性があり、その中には頻度は多くないものの、重篤なものもある。

関節破壊の防止効果の高い(有効性の高い)薬剤ほど、副作用が出やすい傾向がある。


これらの問題点に対応するために、さまざまの治療のテクニックがあります。

抗リウマチ薬の治療効果を高めるための工夫
効果がでてくるまで時間がかかることへの対策
治療初期の段階では、抗リウマチ薬だけではなく、非ステロイド性消炎鎮痛剤やステロイドなどの即効性の鎮痛効果のある薬剤を併用します。抗リウマチ薬が効いてきて、痛みなどの自覚症状が軽減してきたら、非ステロイド性消炎鎮痛剤やステロイドは、減量・中止していきます。中等量以上のステロイドには関節破壊を防ぐ効果もありますので、初期の段階でステロイドを多めに使うこともあります。

どの抗リウマチ薬が有効なのかが、前もってわからないことへの対策
2ヶ月程度、特定の抗リウマチ薬を使って効果が出ない、あるいは効果が不十分の場合は、他の抗リウマチ薬に変更、あるいは他の抗リウマチ薬を追加します。

これを、2ヶ月程度のサイクルで繰り返し、最適な抗リウマチ薬もしくは、抗リウマチ薬の組み合わせ、を探していきます。あるいは、次の項で述べますが、初めから複数の抗リウマチ薬を併用していきます。

効果が不十分な場合の対策
抗リウマチ薬は単独で使うよりも、複数を組み合わせて使ったほうが、関節破壊の防止効果が高いことが知られています。

どのような抗リウマチ薬の組み合わせが、もっとも有効、かつ安全性の面でも満足のいくものであるかについて、さまざまのスタディがなされてきました。

これらの過程で複数使用は単剤使用に比べて、一般的には、安全性の面でも、それほど変わらないことが示されています(もちろん、中には副作用のリスクの高まる組み合わせもありますので、専門医による選択が必要です)。複数使用の有効性は、現在使用できる最強の抗リウマチ薬である生物学的製剤においても、例外ではありません。

レミケードやエンブレルは、一部の情報で効果が強調されすぎているようなところがあり(もちろん、在来の抗リウマチ薬に比べればはるかに効果は高いといえるのですが)、これだけで関節リウマチの進行がストップするような印象をもたれていることがありますが、実際には、効果不十分なこともあることは、使用経験のある患者さん、医師ともにご存知のことと思います。

レミケードやエンブレルは、単独で使用するよりも、リウマトレックス(メソトレキセート)と併用したほうが、より効果が高まります。

あるスタディでは、リウマトレックス(メソトレキセート)を併用した場合は、一部の骨破壊が、修復されてもとにもどることもあることが示されています。 そのほかにも、レミケード、エンブレルで効果不十分の場合に、在来の、あるいは今後導入されてくる抗リウマチ薬を併用して、効果を高めるやりかたが模索されています。

現在の治療では、効果が不十分な場合だけでなく、治療の当初から、複数の抗リウマチ薬を併用していくことも、決してまれなことではありません。

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副作用について-使ったことによる不利益、使わなかったことによる不利益-

副作用のリスクは、どんな治療でも避けて通ることはできない問題です。副作用を、絶対起こさないようにすることは、だれにもできません。副作用の起こりやすい人を前もって予測する方法は、ある程度はありますが、すべての副作用を予測することはできません。起きないときは起きないし、起きるときは起きる、といった部分は、どうしても残ります。

また、副作用という不利益をおそれるあまりに、治療をしなかったら、運動障害という、より大きな不利益をこうむることになってしまいます。ですから、副作用が起きたとしても軽く済ませる方法を考えることが、現実的な対応といえるでしょう。

診療は、患者さんと医師の協力によって成り立つものです。副作用対策にも、患者さんと医師の協力が必要で、どちらかだけで成り立つものではありません。以下では、患者さんができる注意を中心に、お話していきます。個々の薬剤の副作用につきましては、各論編(現在準備中。いくつかの薬剤についてはすでに当ホームページにあります)で述べますので、ここでは、副作用の一般的なことにつきご説明いたします。

抗リウマチ薬全般に共通することの多い副作用症状(アレルギー様症状といえるかもしれません)は以下のとおりです。

  1. 服薬後(当日か、翌日)に強くなる体のだるさ・眠気
  2. 発熱(服薬後に増悪する微熱、38度以上の高熱)
    服薬を続けていると、一般的には熱はどんどん高くなります。
  3. 発疹
    お腹や、手足に多く、細かな赤い発疹が代表的です。一般的には、かゆみを伴います。服薬を続けていると、拡がっていきます。
  4. 結膜炎
    眼が赤くなったり、かゆみが出ることがあります。
  5. まぶたや眼の周りのむくみ
  6. 咽頭~胸部違和感
    のどのところが、かさかさする感じがしたり、咳が出ることがあります。
  7. 痰が出ない咳
    6とも少し重なりますが、咳が続き、息切れを感じるような状態です。風邪との主な違いは、①痰がでないこと、②鼻水が出ないこと、です。
  8. 粘膜障害(口、消化管-食道・胃・腸、尿道)
    口、消化管、尿道の表面を保護している粘膜が傷つくことがあります。これらの部分の痛みで、現れます。
  9. 足のむくみ(特に足首周辺)
  10. 赤紫から茶色の細かい発疹(特に足首周辺)

これらの副作用は、どんな時期にもおこるものですが、「投与開始後あるいは増量後3ヶ月以内」が、特に注意が必要かと思われます。これらの症状が出た場合は、すみやかに主治医に連絡をとるようにされたほうがよいでしょう。

また、自覚症状にはあらわれにくい副作用を、早期に発見するために、安定期に入っても、3ヶ月に1回程度は、血液・尿検査を受けていただくことが望まれます。

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おわりに

人間の体は、「恒常性」という性質を持っています。恒常性とは、体の内外からの異常な刺激を受けても、体の状態を一定の範囲内に保って、正常な活動をおこなうことを可能にする性質のことです。「自然治癒力」という概念もこの「恒常性」の一つの現れと考えられます。

関節リウマチが発症したということは、残念ながらこの「恒常性」では押さえ込めなかった、ということを意味します。「自然治癒力」ではカバーしきれなかった状況を修正するためには、ある程度「不自然」なことをせざるを得ません。そうでなければ、いわゆる「毒にも薬にもならない」ということになってしまいます。

副作用を軽減し、安全に治療を行なうために、専門的な知識と経験を持つ、われわれ医療従事者は存在するのです。 患者さまと協力して、より安全な、そして、より有効な治療を実現するために、本稿がいささかでもお役に立てることを願って、総論編を閉じさせていただきたいと存じます。 本稿作成に当たっては、以下の文献を参考にさせていただきました。

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Puolakka K, et al. Impact of initial aggressive drug treatment with a combination of disease-modifying antirheumatic drugs on the development of work disability in early rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum 2004;50:55-62

Yelin E, et al. Association between etanercept use and employment outcomes among patients with rheumatoid arthritis. Arthritis Rheum 2003;48:3046-54

O’Dell JR. Treating rheumatoid arthritis early: A window of opportunity? Arthritis Rheum 2002;46:283-5

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