多発性硬化症センター
治療について
急性期・増悪期の短期治療
メチルプレドニゾロン・パルス療法(ソルメドロール1000mg点滴、3-5日間)
再発・増悪の早期に開始します。
血液脳関門の破綻を修復し、機能障害からの回復を早める短期効果が認められます。
経口メチルプレドニゾロンを追加する事もあり、こうした追加的投与にどのような効果あるいはマイナス効果があるかの評価は行われていません。
短期メドロール内服療法(漸減して3週間で中止)
数カ月の観察ではパルス療法と同等の効果が報告されています。改善が見られなくても中止します。漫然と継続投与することの有効性は否定されており、慎むべきです。
ステロイド減量により悪化を繰り返すステロイド依存性となったり、けん怠・脱力を訴えるステロイド依存症となる恐れがあります。
他院で慢性投与されてきた場合は副腎機能検査の後、隔日投与をへて中止します。
血漿交換療法(プラスマフェレーシス)
ステロイド・パルス療法で改善しなかった急性で重度の障害に対し、クロスオーバーの二重盲験試験を行い、短期で42%(8/19)に中等度以上の急速な改善を見ました。
シャーム・フェレーシスでは6%のみでした。6カ月の追跡期間中に改善した8人の患者さんの内4人に再発を見ました。
いずれの研究も小規模試験であり、追試験が必要と考えられます。
再発防止・進行抑制の長期療法
再発寛解型へのインターフェロン・ベータ1b(ベタフェロン)とベータ1a(アボネックス)
- 遺伝子工学的に作られた蛋白であるインターフェロン・ベータ
MS治療の標準薬として国際的に認められています。2006年11月末から、国内でもアボネックスの治療が開始されました。前者は隔日皮下注射ですし、後 者は週1回の筋肉注射で、自己注射が原則です。場合によっては、医療機関などで注射を受けている方もいらっしゃいます。両者の使い分けは研究者でも必ずし も一定しておらず、どちらを選ぶかは、主治医の先生とご相談下さい。
ベタフェロンは国内で多施設共同研究により、多数の日本人の患者さんでも有効性と安全性が確認されたました。
MRI造影病巣の劇的減少、MRIでの病巣面積の増加の抑制、MRI活動病巣の減少、 臨床的再発回数の減少、認知機能の悪化の抑制等が確認されています。
脳萎縮の進行を抑制します。
また、アボネックスは欧米白人と同様に、日本人患者でも造影病変数を減少させる効果が認められ、少数例の治験のみでしたが、私たち、日本人MS研究者たちの強い要望で、急遽、認可されました。
視神経脊髄炎型(Neuromyelitis optica: NMO)では、本剤の治療により再発頻度が高くなる可能性が指摘されましたが、当院での多くの患者さんでの検討では、もともとこの病型では再発頻度が高い ため、治療後に再発頻度が高くなるわけではないことが示されています。現時点(2007年11月)では、この病型では禁忌ではないと考えています。ただ、 明らかに欧米の白人に多い通常の多発性硬化症の方より効果が劣ることは確かで、全体的には治療効果を期待はできません。ただ、中には再発が抑えられている 患者さんもいらっしゃるので、本剤で再発が抑えられているようなら、続けておいた方がよいでしょう。
視神経と脊髄に症状が限局している病型はOSMS (視神経脊髄型多発性硬化症)あるいはアジア型として知られてきました。この病型とNMOとが混同されています。同じではありません。視神経と脊髄はもと もと白人の多発性硬化症(古典型として知られています)でも、傷害されやすい部位なのです。5年以上、視神経と脊髄に症状が限局している場合であっても、 NMOではなくて古典型のこともあり、この場合はインターフェロンの効果が期待できます。ですから、症状の場所だけで、病型を決めつけてしまうことは危険 です。脊髄のMRIで3椎体以上の長い病変が脊髄中央部に存在しているかどうか、血液中に抗アクアポリン4抗体が存在しているかどうかがNMOの診断の決 め手です。この両者がどうなっているかを知る必要があるのです。 - 本剤投与中にも関わらず再発悪化を来したケース
メチルプレドニゾロン・パルス療法を追加しますが、本剤の投与を中止するべきではありません。
本剤使用の患者さんにはパルス療法の脳MRI造影病巣抑制効果を延長せしめる事が示されています。 - 中和抗体
半数以上の中和抗体陽性患者さんでは抗体価は後に低下・消失し、数年の後には陰性者が多くなります。
しかし高力価の抗体が持続する患者さんでは、2年後には治療効果が減弱する可能性があります。インターフェロン治療を続けるかどうかに関して、この抗体の 評価は欧米で一定しておらず、ヨーロッパでは中和抗体陽性患者では治療中止を勧告していますが、米国神経学会のガイドラインでは抗体測定の意義を評価して いません。日本ではさらに測定環境が厳しく、国内で測定できるのは、インターフェロン・ベータ1bに対する抗ウイルス作用の減弱の度合いでしか測定でき ず、本来の目的である免疫調節作用を減弱しているかどうかは判らないのが現状です。 - 副作用
開始当初、半数以上で3週間は発熱・倦怠感を呈します。
注射局所の皮膚発赤硬化や希に壊死を生じる等の副作用症状も見られ、5ー10%の脱落者があります。
しかし大半の患者さんは数年間の投与を問題なく続けています。
肝炎の治療でのアルファ・インターフェロン(初期の投与量も多い)に比し副作用の頻度や重篤さがより軽度です。
鬱反応などの精神症状が増えることは否定されています。
二次性慢性進行型へのベタフェロン
インターフェロン・ベータ1bは慢性進行型症例でもその再発頻度や障害度の進行を抑制し、MRIでの病巣面積の増加を抑制することが確認され、ヨーロッパ、アメリカ、日本で承認を受け、使用されています。
IFNβが使えないか、使用しても再発・進行が見られる場合
- ミトキサントロン
欧米で活動進行の強い場合に承認されています。当院では、すでに30人以上の方が治療を受けていらっしゃいます。
進行抑制効果が強く、障害進行やMRI病巣増加を抑制します。
抗白血病薬です。副作用(吐き気、食欲低下、脱毛、白血球数減少、稀に白血病を起こすことも。女性8人に一人不妊症になります。)に注意を要します。詳細 は、当院ホームページの専門医向けで紹介しています。治療を受ける前には、詳細な説明を主治医から受ける必要があります。気楽に受けるべき治療法ではあり ません。
日本では自己負担でしか利用できません。 - タクリツマブ
ヒト化抗インテグリン・モノクローナル抗体、月一回点滴 。非常に効果が強く、副作用もあまりないと報告されています。最近、重篤な副作用が報告されました。 悪い炎症細胞が脳の血管に接着できず、進入しないため脳脊髄の病巣を抑制。 - 定期的メチルプレドニゾロン・パルス療法
ソルメドロール1000mg点滴、5日間、3月に1回、定期行います。 長期の継続でMRIでの脳萎縮の進行抑制が報告されています。インターフェロンでも進行の有る方、使えない方に利用しています。 - アザチオプリン(イムラン)
軽度有効ですが、副作用もあり、インターフェロンが使えない時にのみ選択します。 - ガンマグロブリン大量点滴
有効性の証明は不十分といえます。
日本の健保で未だ利用できない薬物(個人輸入は可能)
再発寛解型への薬物(欧米では承認)
インターフェロンβ1a(レビフ) 皮下注、3回 / 7日
グラテイラマー・アセテイト(コパキソン) 皮下注、1 回 / 日
進行型・重症型へ試験的に利用される治療
- 低用量メトトレキセート
軽度有効との報告がありますが、大規模試験での確認が待たれています。 - エンドキサン
有効性は一部の小規模オープン試験で主張されていますが、大規模な盲検治験では証明されていません。
対症療法
中枢神経に病巣が出来たために生じる色々の症状を軽減する目的で様々な薬が使われています。
症状としては:痛み、しびれ感、痙攣、ツッパリ、頻尿、尿失禁、筋力低下、倦怠感、ふるえ、精神症状など。
